ARCHITECURE AND CHILDREN ONLINE MEETING 2021②
講演「建築と子供たち~創造性を育む教育法について考える~」
フロリダ在住の酒井敦子先生にオンラインで講演いただきました。
日本は朝の10時、フロリダは夜の9時。
他の参加者の方も仙台、大阪、名古屋、新潟、シンガポールと各地からご参加いただき、
2021オンラインワークショップのまとめと、2019年に大阪で行われた「はじめての建築と子供たち」の内容も含めて、「建築と子供たち~創造性を育む教育法について考える~」というテーマでお話していただきました。
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建築と子供たちの哲学:教育学
このプログラムはニューメキシコで生まれました。
この教育法は、アン・テイラー先生がアリゾナ州立大学での博士課程のころに始まり、
60年代以降の環境問題に影響を受けていることから自然とのつながりがよく考えられているプログラムです。
環境は、宇宙の法則やモノの原理を代表するものであるので、環境を学ぶ事により、すべての学習ができる。我々は環境の一部であり、環境は自然に学びの文脈や場所を作ってくれる
アン先生はよく、BODY、MIND、SPIRITと言っています。
それは3つの学習要素のことで、五感などの物理的、感覚的、生理的なものをBODY、論理的な思考や概念的な学びをMIND、文化的な価値観や精神面をSPIRITと表現しました。
環境自体が学びの文脈であることを利用して、環境を使いながら学習内容・学科を学ぶことができる、そしてぐるぐる回りながら3つの要素を鍛えることができるという学びの過程を大切にしています。
歴史的背景と流れ
建築と子供たちは、80年代にはプログラムとして成立し、85年にスクールゾーンインスティテュートが設立され、87年にカリキュラムポスターができ、91年には教師用のガイドブックもできました。同じ頃、ドリーン・ネルソン先生のCity Building Educationなど他のプログラムもできて、2000年ごろには、ウェブやネットワークの普及でアメリカ各地のプログラムや世界の様子もわかるようになってきました。
そして、2019年に、アン先生がアメリカ建築家協会で、AIA Collaborative Achievement賞を授賞され、それをお祝いした矢先、コロナがやってきて、建築と子供たちのプログラムを体験できるオンラインビデオができました。
プログラムの基本構成
プログラムの構成は基本的なものから応用まであります。
2021年のオンラインワークショップでは基本プログラムを実践しましたが、基本のプログラムでも模型作りや構造デザインなど、だんだんと難しくなっていく内容になっています。
簡単な内容のものでも中身を見ると非常に興味深い内容になっています。
例えば基本の最初にある視覚言語とコミュニケーション。
色々な線の書き方表現の仕方で視覚でコミュニケーションを図る可能性を学びます。線を書くことは単純に思えますが、線にはいろいろなものがあり、それによって深さも違うし、奥行きも出てくる。さらに、表面を処理すると3次元ができます。そういうことを少しずつ学んでいかなければならない。言葉も大切ですが、視覚的コミュニケーションも大切です。
空間の構成について
ポジティブフォームとネガティブスペースのワークショップでは2つの空間の要素に気づくことの大切さも学びました。
建築というのはモノとして見ると、壁とか触れるものをいろいろ組み合わせてつくられています。でも体験しようとすると、空間としての建築体験というのが大切で、そこを考えないと建築デザインというのはできません。
日本では、「間」というコンセプトがあるので、わかりやすいと思うのですが、西洋では、「間」という考え方があまりなくて、芸術学やアートに入っているから学ぶわけで、それをポジティブフォームとネガティブスペースとして学んでいます。
なぜこれを学ばないといけないかというと、私たちの脳の仕組みにも、哲学のゲシュタルト論5にも関係しています。
有名なウサギとカモの絵は、目と脳の関係で、ウサギに見えることもあるし、カモに見えることもあります。ウサギとカモは交互には見えやすいですが、両方一緒となると難しいのです。建築でもポジとネガを平等に見るという事は難しい。だから頭のトレーニング、デザインのトレーニングをするのです。
2017年、六郷小学校では、道をデザインしたとき、ゲシュタルト論5を利用して、道自体を強調したものと道の周りを強調したものとを、5年生に交互にデザインしてもらい、それらを一緒に並べて、ポジとネガのコンセプトを学んでもらいました。
立体化:2次元から3次元へ
アン先生は、デザインパターンというものが、自然のパターンを利用したデザインで、物事を整理する、頭を整理するための方法「Organizing Principle(構成的原理)」であると言っています。この原理、デザインパターンを学びながら、紙を利用して、モノの立体化の面白さも少しずつ体験していきます。
創造性を育む:想像する、創るという行動とは?
想像する、創るという行動とはどんなことだろう?
私たちは、日頃深く考えずに無意識に行動しています。
それを言語化したのが、彫刻家のリチャード・セラです。彼は、自分がやっている彫刻という行動についていろいろ考えてそれを言葉にしてみました。それが動詞のリストです。
ワークショップで自分がどんな行動をしたか考えながらリストにチェックマークをつけます。
こうすることによって、自分の行動とか子供たちの行動をしっかり見極めることができます。そしてそれをいかに言葉にしていくかということがとても大切なことです。
視覚言語も大切ですが、それを言葉に戻すという思考能力の訓練もとても大切です。
スタジオ:創造的な教育とその環境
創造的な教育に必要な環境とは、スタジオ形式のものを建築と子供たちは利用しています。子供たちが中心で、教える側は先生というよりファシリテーターとして、子供たちの行動をサポートしてあげるということが多いです。
親としてのアプローチ
ここからは、2019年の大阪のワークショップのときの質問内容も取り込んでいます。親として何ができるのかという質問がありましたが、どうやって子供が遊べる環境づくりができるかを考えてほしいと思います。それから遊びの楽しさですね。子供は勝手に好きなようにできます。それをなるべく触らずさせてあげる、失敗させてあげる、失敗を恐れない、失敗したらそこからどうやって戻せるのか、先に進むかを教えてあげないといけない。そして自分たちで行動し、判断してもらって、それがよかったのかどうか考えてほしい。そのためには、子供の話を聞いてあげたり、子供なりの理屈を聞いてあげたり、そういうことがとても大切です。そして、子供の違う面、成績表の5科目で見えないものを見て、それを少しずつサポートしてあげる、例えば考え深さとか、共感力とかを見てあげる、そういうところに面白みがあると思うのです。
子供と環境:デザインプロセスと思考
子供というのは、私たちが思う複雑な環境は見えていないと思うのです。私たちは、空間とか環境といった漠然としたコンセプトを、生まれてすぐ把握できるわけではありません。
以前、幼稚園のプロジェクトで、4−5歳の子供たちにカメラを渡して、私はその後ろからついていきました。ブロックの間を行ったりして、大人みたいに真っすぐ歩かないのです。
そこで気づいたのは、子供はモノとか人を中心に見ているということです。先ほど話したネガティブスペースは見えていないのです。自然環境とか文化的環境とか、そういう複雑なものになると、すぐ学べるというわけではないのですね。ですから、敷地の分析をする、観察する、データを分析する、研究する、アイデアを出してまとめる、問題解決をするというデザインを通して、モノから内部の空間について、または文化的なものを学んでいくわけです。そうしたデザインプロセスを学ぶことによって思考力も養われます。デザインの力というのは、考える力でもあるのです。このようにして複雑な環境というものを子供たちは理解できるようになると思います。
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